ここ数年、1on1ミーティング(=以下、1on1)を導入する企業が急増しています。2022年4月、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが発表した「1on1ミーティングに関する実態調査」によると、1on1を導入している企業は67.7%、3年以内に導入した企業は、実に60.5%にのぼるといいます。1on1とは、一般に「人材育成の施策として、上司と部下が1対1で定期対談すること」ですが、その内容は主に「フィードバック」と呼ばれるもの。部下を指導したり、悩みを聞いたりすることで、自らの成長を促し、信頼関係を築くのが目的とされています。実際、国内ではヤフーやソフトバンクなど、多くの企業が積極的に導入した結果、従業員のパフォーマンスやワークエンゲージメントが向上するなど、大きな成果を生み出しました。しかしながら、一方では“悲鳴をあげる現場”も少なくありません。会社によって、メリットどころかデメリットすら感じてしまうフィードバック。成功と失敗、明暗を分ける違いは何でしょうか。そもそも、フィードバックは企業にとって本当に必要なのでしょうか。基本的な知識をはじめ、失敗例や成功例など、具体例を交えて解説していきます。「フィードバック」とは? ~目的別に3つの種類~1on1で行われている「フィードバック」には、主に3つの種類があります。それは「ティーチング(指導)」「コーチング(成長を促す)」「カウンセリング(メンタルケア)」です。1. ティーチング(指導)業務に必要な知識を部下に伝え、スキルの底上げを目的とした対話です。特性上、上司から部下への一方的なコミュニケーションとなりますが、「自分のためになる」と思ってもらえるような対話スキルが求められます。2. コーチング(成長を促す)部下の成長意欲を促し、目標意識を高めるための対話です。業務や自身のキャリアにどんなビジョンをもち、達成のためにはどんな行動が必要なのか。自走できるマインドを育みます。3. カウンセリング(メンタルケア)部下の悩みを共有し、問題解決の手助けを行うための対話です。適切な対処ができれば、部下は安心して働き続けられますが、失敗すれば信頼感は失われ、離職の “最後のひと押し” になり得ることも。これら3種のフィードバックは、正しく使い分けることで「部下のパフォーマンスを最大限に発揮させる」という効果が望めます。これは “経営学の神様” ことドラッカーも提唱していますが、管理職が最優先で行うべき業務なのです。効果の高いフィードバックを積み重ねていけば、部下のパフォーマンスは上がり、組織の生産性も向上、企業の成長へと繋がります。しかし、経験則や思い込みでフィードバックを行うと、まったくの逆効果に。「誤ったフィードバック」の例を挙げてみましょう。フィードバックにありがちな問題 ~ケースごとの適切な対処法~【 上司の例 】「自分の実務をやる時間が奪われる」この問題は、管理職の業務量が適切でないことが原因です。経営者を筆頭に、組織全体で業務改革を実施しないといけません。「部下にできることは部下に任せ、管理職がマネジメントに専念できる環境を作ること」が、フィードバック制度を導入するための大前提となります。「せっかくコーチングしているのに、本人にヤル気がないから意味がない」これは、自分本位な上司にありがちな例です。例えば指示や手法、思想など、自分の価値観を部下に押しつけていませんか。自分と部下は別の人間。まずは部下の性格を見極め、それに適した成長のビジョンを“一緒に”考えていく必要があります。「何を話せばいいのか分からない」普段から業務以外の会話がないと、どうしてもこうなりがちです。特にカウンセリングの際は、「悩んでいる相手に共感の気持ちを示す」「解決に向けて行動する姿勢を、納得感のある言葉で伝える」など、適切なトークスキルが必要です。もともと口下手な人は、練習が必要かもしれません。【部下の例】「悩みを話しても全然改善してくれない」部下の悩みには、解決できないものもあるでしょう。そんな場合は、真摯な対応と、今後のフォローを具体的に示さなければいけません。例えば「解決しようと動いたが、こんな理由でできなかった」「解決に向け、今後はこう動いていく」と、部下が心から納得し、安心できるような落とし所が必要なのです。これも、繊細なトークスキルが求められます。「相談できる雰囲気じゃない」これは、普段の「信頼関係」がモノをいいます。同僚ならともかく上司と部下の場合、「相談しやすい関係性」は、上司側から積極的にアプローチしなければ生まれません。もともと交友を広げるのが得意なタイプならいいですが、そうでなければ「雑談力を上げる」など、相応の訓練が必要でしょう。「ダメ出しされた」という負の感情だけが残る例えば、どうしても否定的なことを伝えなければいけない場合、まずは「肯定・褒める」のワンクッションを挟みましょう。最初に「君の意見は正しい」「分かりやすくまとめてくれてありがとう」「あなたを攻めているわけじゃなくて~」と伝えるだけでも、相手の感情は大きく変わってきます。正しいフィードバックにもっとも必要なこと ~「感謝の気持ち」という心構え~フィードバックを成功させるため、必要なメソッドはまだまだ沢山あります。例えば「褒めるときは相手そのもの、注意するときは相手の行動」なども、そのひとつ。心に留めておくだけで、フィードバックはもちろん、普段の信頼向上にも役立ってくるでしょう。intelやGoogle、ヤフーやソフトバンクなど「1on1ミーティングを導入して成功した企業」は、こうしたメソッドを学び、適切に実行したからこそ、高い成果が生まれたのです。しかし実は、多くのメソッドを学ぶ前に、ひとつ重要なポイントもあります。それは「感謝の気持ち」です。例えば、普段から部下に「ありがとう」を言っている管理職はどれだけいるでしょうか。フィードバックを成功に導くには、信頼関係が前提となりますが、その実現のために「感謝の気持ち」は非常に重要なのです。部下が失態をした際でも「ミスを報告してくれてありがとう」、ズレた提案をしてきても「意見を出してくれてありがとう」と少し添えるだけで、部下のモチベーションは大きく変わってきます。そしてこういった積み重ねが、フィードバックの結果にも大きな影響を及ぼすのです。1on1の教本で、「ポジティブな気持ちにさせましょう」「本音トークを引き出しましょう」などと書かれているものもあります。しかし、信頼していない相手には、何を言われてもポジティブな気持ちになりませんし、本音などは絶対に言えません。普段から感謝の気持ちを示し、信頼関係を築き、フィードバックの際にも適切にその気持ちを伝えることで、それはようやく実現できるのです。テレワークが普及し、対面での関係構築が難しくなった昨今。管理職にとって、部下のパフォーマンスやモチベーション向上のため「1on1=フィードバック」は必要不可欠なものになりました。しかし中小企業にとって、フィードバックを導入し、成功させるためには多くのハードルがあるのも事実。ならばせめて、「感謝の気持ち」という心構えからでも始めてみてはどうでしょうか。人間関係と同じで、部下のマネジメントも一朝一夕ではなく、日々の積み重ねが大切なのです。意義のある1on1やフィードバックを実現するサービス「みんなのマネージャ」私たち、スカイストーン株式会社が提供する『みんなのマネージャ』は、フィードバックにありがちな課題を解決し、必要なメソッドを手軽に習得できるサービスです。メンバーそれぞれの個性を把握し、性格に適した声かけや、フィードバックに適切なトーク内容を提案し、正しい1on1の実現をアシストします。『みんなのマネージャ』を導入することで、日々、メンバーとの信頼関係を着実に構築。パルスサーベイで弱ったメンバーを早期発見し、適切な声掛けや対応が可能となります。1on1やフィードバックでお悩みの方は、ぜひ一度、お問い合わせください。